アハト
オトコは走る。
その後ろから後ろから橋は崩れて行く。

オトコは振り向かなかった。
そう、戻る必要はない。

黒いライフは塔を、橋の切れ目と同じ、あらゆる色に変化する階段を渾身の力で駆け上がる。
最後の力ではない。
最初の力を込めて、駆け上る。

蒼く洸る最後の一段を踏み込んだ瞬間、塔は、いや空間は音もなく美しく崩壊した。


黒いライフは瞳をあける。
ゆっくりと流れる暖かい空間の中で。

目の前には白いライフと自分を救ってくれたあの少女とアハトがいた。

白いライフは子供の様な笑顔になって言う。

『お帰りライフ。』

黒いライフも同じ笑顔で白いライフと少女とアハトに返す。

『ただいま。』
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