アハト
アハト〜ライフ〜
丘の上の紅い樹の隣に尼色の小屋がある。
みずあさぎの陽の光が彼の部屋に暖かくそそぎ込む。

ライフはその光で目を覚ます。
純白のベッドの上で大きく伸びをする。
ライフは純白のベットで丸くなっている黒猫をなでる。

『おはよう。アハト。』
黒猫は大きな白いあくびをするとたんばに輝く目を細めてライフにすりよる。

ライフは木の机の赤いコップで露色のお茶を飲んだ。

鏡の前に立つ。

朱い唇が、碧い瞳が、黒い髪が美しく生きている。

『アハト。今日は帰りが遅くなるよ。』

ライフが言うと黒猫は不服そうににゃあと鳴き再び純白のベットで丸くなる。

もう黒い点と化す事はなくアハトはアハトとしてそこに存在した。

『アハト。』
ライフは困った様に笑い、アハトをなでる。

窓の四角に七色の虹が翔ける。

ライフはその碧い目を細める。

『アハト。虹が出てる。きれいだ。』

空は突き抜ける蒼、翔ける七色の虹、やわらかな雲、光る太陽、花たちは咲き乱れ、風は大地と共に歌う。
すべての色と音と命は美しく生きている。
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