アハト

『おはよう』

部屋にみずあさぎの光がさしこんでいた。

『おはようアハト』

オトコはネコにもあいさつをした。
一日の内に二回もコトバを発したがオトコにはこれが新しい日常だった。

アハトは彼の名前だ。
オトコがつけたのか始めから付いていたのか、だがネコはアハトだった。

アハトは瞳をタンバ色に輝かせてオトコにすり寄った。

オトコはアハトをなでてやるといつもの様に部屋を出た。


アハトは付いては来なかった。

紅い樹は葡萄色(えびいろ)に姿を変えていた。

いわぬ色をした背の高い花にその葉が落ちた。

カゴを手に道を歩く。
昨日枯れていた辺りは一面薫の花で満たされていた。

ネコは翠露と遊んでいた。

部屋に入りオトコはいつもの食事をとる。

窓の外は穏やかに晴れて見えた。