いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。

勇気をこの手に




【黒崎side】



「肉じゃが定食お待たせしましたー。ご注文の品はお揃いですか?」



俺が軽くうなずくと、店員は伝票を置いてそそくさと去っていく。



塾帰り、俺はひとりでファミレスに立ち寄っていた。


病院には立派なプライベートルームがあるらしく、父さんはそこで寝泊りすることが多い。

身の回りのことはなにも出来ない父さんには、母さんがいつも付き添う。


つまり、俺は家でひとりというわけだ。


跡取りになったとはいえ、昔と変わらず結局は放任みたいなもの。

それでも家に父さんがいて息がつまるより、ずっといい。


俺のために洗濯や炊事をするお手伝いという人間は居るが、その人の作った飯を拒否してるうちに、父さんは俺に金を渡すようなった。

最低限、体調の管理だけはしろ、と。


その意味を聞かずとも分かる俺は、こうしてファミレスなどの飲食店で晩飯を済ませている。



ひとりで飲食店に入るのには全く抵抗がない。

コンビニ飯を自宅でひとりで食うよりずっといい。

人の中に居た方が、孤独を感じなくて済むから……。

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