いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
苦しみの狭間で、それでも一生懸命軽口を叩くようにあたしに謝罪する黒崎くんの心が、悲鳴をあげてるのなんて分かってたから。
ほんとうは、お兄さんに事実を伝えられなかった自分のことが一番許せないんでしょ?
だから、その想いを塗り替えるように周りを恨んで……小野先生を憎んで……。
「もっ……いいから……」
……そして
キスしたことを……謝らないでほしくて。
「あたしなんかのことは……どうでもいいからっ……」
座ったままの黒崎くんの頭を抱えるようにして、ギュッと包み込んだ。
顔をあげるでもなく振り払うでもない黒崎くんは、それほどの気力さえ残ってないということ。
お兄さんのことを口にしてつらかったはず。
ほんとうは、心の中は土砂降りだったよね……。
なんて言葉をかけてあげたらいいんだろう。
大丈夫、もちがう。
つらかったね、もちがう。
口下手なあたしは、黒崎くんの心を癒してあげることすらできない。
それでも、ただ体を預け続ける黒崎くんをしっかり抱きとめていた……。