いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。

友達として




「おー!柏木戻ってきた!」



チャイムが鳴って教室に戻ると、和久井くんの明るい声が出迎えてくれた。

だけど大多数の人には歓迎されるはずもなく、白い視線を感じながら万葉ちゃんとふたり、一直線に自分の席に向かう。


廊下はガラスの破片が跡形もなく綺麗になっていて、残っていたドアのガラスも全て取り除かれていた。



「さっきの柏木、すげえカッコ良かったぜ!大人しそうに見えて、ああいうこと言えたんだな」



静かに席に着いたあたしに和久井くんの声。



「俺もわりと黒崎が苦手だったけど、なんで苦手かっていったら特別なエピソードもないんだよ。ただ、ツンケンしてるとかのイメージでアンチだっただけ。よく考えれば黒崎もすげー大変なもの背負ってんだよな。その大変さ、ちょっとだけ分かった気がした。高校生で将来が決まってるとか、俺ならプレッシャーで死んじゃうかも」


「……ありがとう」



黒崎くんのこと、少しでも分かろうとしてくれたのがうれしい。

ひとりでもそう思ってくれたのなら、声をあげた意味があったから。



「律は落ち込んでたみたいだけどな……」



気になる言葉を落とされて前に視線を投げると、律くんのシャツの背中が少し小さく見えた。

クラスメイトの前で堂々と黒崎くんを庇ったあたしを、律くんはどんな想いで見ていたんだろう。

あのときのあたしには、そこまで気を回す余裕なんて残っていなかったんだ……。

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