もしもの恋となのにの恋
「・・・夏喜?どうしたの?どこか痛いの?」
「・・・え?う、ううん・・・。何でもない。・・・ちょっとぼーっとしてただけ」
私はそう言ってその場凌ぎの笑みを満面に湛えた。
千鶴はそれを見て少し変な顔をしたけれど何も追求はしなかった。
「・・・この後、どうする?」
秋人が誰に聞くともなく聞いた。
私は心の内でひたすら秋人と二人っきりになりたいと願った。
大体、なぜ正式なカップルである宮原さんと千鶴と一緒に私と秋人はお茶を共にしているのだろう?
鰯の水槽前で鉢合わせた私たち四人は水族館内にあるカフェでお茶を共にしていた。
「一緒に回る?」
千鶴のその一言に私の心臓は嫌に高鳴った。
余計なことを・・・。
心の内でそんなことを思った。
千鶴は私と目が合うとニコリと笑んで『どう?』と問うように小さな頭がのった細い首を傾げた。
本当にこの女は・・・。
「・・・俺たちは邪魔だろうからまた今度、一緒に回ろう」
・・・え?
そう答えたのは秋人だった。
ドクン・・・。
私の心臓はまた高鳴った。
ただ、先ほどの高鳴りとは種類が違った。
ドクン・・・。ドクン・・・。
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