もしもの恋となのにの恋
幽霊
宮原さんと千鶴は今もあのカフェで談笑しながら魚を見ているのだろうか?
俺はそんなことを思いながらふわふわと水槽内を泳ぐミズクラゲを凝視した。
まるで子供番組に出てくる幽霊だな・・・。
俺は心の内でそう呟き、隣で頬を紅潮させている夏喜をこっそり覗き見た。
千鶴たちと別れた俺たちは無言のまま水族館内を見て回っていた。
嗚呼、つまらない・・・。
「クラゲって・・・可愛いよね」
小さな声で夏喜はそう言うと照れ臭そうに笑った。
「・・・夏喜の方が可愛いよ」
俺は心にもないことを平常心で口にした。
本当に俺は嫌な男だ・・・。
もしも、相手が千鶴ならそんなこと、口が裂けても俺は言えない。
なのに・・・だ。
夏喜には言える。
それだけ千鶴と夏喜は違う。
もしも、今、俺の隣に居るのが千鶴なら俺はどれだけ幸せだろうか・・・。
「ちゃっ・・・茶化さないでよ!」
そう照れた声を出す夏喜に俺はひどく冷めていた。
心にもない言葉を本気にする馬鹿な女・・・。
嗚呼、つまらない・・・。
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