もしもの恋となのにの恋

「・・・お前が・・・千鶴が本当に好きなのは・・・忍だろ？」
秋人のその言葉に私は息を飲み込んだ。
苦しい・・・。
溺れるように苦しい・・・。
そして、私が本当に好きなのは・・・。
「ち、違うよ？私が本当に好きなのは・・・」
「黙れ」
秋人はまた私の言葉を遮った。
それに私は大人しく従った。
重たい沈黙が訪れた。
私はただ、秋人の目を見つめていた。
秋人もただ、私の目を見つめていた。
カチカチと時を刻む時計の針の音だけが部屋の中に虚しく響いていた。
静かだ・・・。
部屋の中は悲しくなるほど静かだった。
まるで世界から切り離されたかのように・・・。
その静寂を破ったのは秋人だった。
秋人は私の目を見つめたまま口だけを動かしだした。
「千鶴、俺が今から言うことをよく聞いて・・・」
秋人のその言葉に私は黙って頷いた。
それ以外のことを私はできなかった・・・。
それほど秋人の目は真剣だった。
これ以上の嘘は許されない・・・。
そう、私は確信した。
私は静かに秋人の言葉を待った・・・。