名のない足跡

「目の前で貴女が殺されそうなのに、何で黙って見てなくちゃならないんです?」


「………っ」


「全く…あれだけお側にいたのに、貴女の考えがさっぱりわかりません」


ため息と共に、ライトはツカツカとあたしの側まで歩く。


あたし体は、ふわりとライトに包まれた。



「…無事で、良かった」



自然に、涙が溢れ出る。


こんな形で、出会う予定じゃなかったのに。



ウィリー王とビシッと決着をつけて、ライトに会いに行って…


言いたいこと言うだけ言って、怒って…


一緒に帰ろうと思ってたのに。


「…っ、ライトの、大バカ…!」


「バカです。認めますよ」


ああ、もう。


こんなこと言う為に、わざわざ来たんじゃないのに!



でも、いざ本人を目の前にすると、何から言えばいいのかわからず、ただ黙り込むばかり。


すると、ライトの腕に力がこもった。


「何故…ウェルスに来たんですか?」


「…ライトに会いに来たんだよ」


そんなわかりきったこと聞かないで、と思いつつも、あたしもライトの背に回す腕に力を込める。




< 308 / 325 >

この作品をシェア

pagetop