名のない足跡

「俺が…裏切ったのに?」


「…そうよ」


それでも、一緒に過ごしたあの日々は、嘘なんかじゃない。


楽しかった思い出は、全部心に残ってる。


「あたし…だめなの。ライトがいなくちゃ」


「………姫様」


久しぶりに聞いた、ライトの"姫様"。


たったそれだけのことが、すごく嬉しい。


「…それでも、俺は…」


「…自分に嘘をつくな、ライト」


「!!」


ウィリー王が、ゆっくりと立ち上がった。


駆けつけたアズロが、あたしを庇うようにして立つ。



ライトが険しい表情で、ウィリー王に言った。


「…父上―…。父上を裏切るつもりはありません。しかし、このひとだけは…」


「…いいんだ、ライト。おそらくはお前が正しい」


ウィリー王は、自分の傷口を自分の魔術で治し始めた。


ライトはウィリー王の言葉に目を丸くした。


「父上、それは…どういう意味で…?」


「…そんな事もわからないのか?お前は」


嘲笑ともとれるその笑みは、ライトとあたし、それにアズロをも混乱させた。




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