冷徹社長の秘密〜彼が社長を脱いだなら〜
その言葉に今度は私が赤面する。そして言葉を失った。形勢逆転とばかりにソファの上で後ずさりする私にニッコリ笑って距離を詰める諒。

『どうした?さっきまでの威勢は?』

『・・・や、やっぱり今日はおとなしく寝ます』

『残念だな、それは無理だ。煽ったのはお前だからな。逃がしてやるほど余裕はない。覚悟を決めろ』

お姫様抱っこで連れて行かれた寝室。いつもこっそりと入っていたけれど、ベッドの上に寝るのは久しぶり。


でも、今日は抱きしめられて眠るだけでは終われない。怯えつつも私も嫌じゃないと覚悟を決めた。


「・・・怖いか?」

「少しだけ」


少女漫画のように、痛みが全くなかったなんてことは言えないけれど、幸せな痛みだと思えた。

いっぱいキスをして、ちょっとの間離れ離れになる分、たくさん抱きしめあった。

朝からこんなことを思い出すなんて本当にもう、恥ずかしい。でも、ちょっぴり嬉しい。


大丈夫、諒がいなくてもたくさん愛されたから、頑張れる。早く帰ってきてくれるといいなと思いつつ、私は出勤準備を始めた。
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