冷徹社長の秘密〜彼が社長を脱いだなら〜
「好きですよ。私、諒のこと。最初は高嶺の花だと思っていましたし、怪我をさせたことへの負い目で私を大事にしてくださっていたんだと思っていました。でも、それでもいつも優しくて、包み込んでくれて、好きにならないわけないじゃないですか」


「そうか。俺はお前を落とせたんだな。お前は、本当に素直で可愛らしくて、優しくて頑張り屋だ。時折、無茶をしてハラハラすることもあるけれど、だからこそそばに置いておきたいし、目が離せない。俺はそれだけお前にハマってるよ。本当に好きだ」


自分で言った告白まがいの言葉も、諒が言ってくれた言葉もどちらもすごく照れ臭くて、頬が熱くなった。でも、言えて良かった。聞けて嬉しかった。


離れているのに、電話越しでしか話せない距離なのに、今とても諒が近くに感じられて、ソファに座って目を閉じると肩を抱き寄せられているような気分になれた。



「・・・諒、帰ってきたらいっぱい抱きしめてくださいね」



「ああ、お前もそのときには、敬語を使わないようになっていてくれよ。名前呼びはもう定着したから次は敬語をなくすこと。いいな?」



「・・・頑張ります」



「帰ってから敬語が抜けていなければ、毎回ペナルティだからな。それと、一つだけこれはお願いだ。お前はジョルフェムの商品のためなら無茶をすることが多い。それはありがたいが、これからは『俺のために無茶をするな』物は壊れても修理出来る。でも、お前は一人しかいない。それを忘れるな」


スーッと私の中に入ってきた諒の言葉は、これから私のストッパーになってくれるだろう。いよいよ明日からEMISIAの初日。前日だというのに私は、ノープランで挑む。


どうにかなる。きっとなんとかなると思っていた私は、自分の甘さと未熟さを知ることになるなんて諒との電話の幸せな気分でいっぱいで考えもしていなかった。
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