親友の死、コトバは罪より重い(アメリカイヌホオズキ)


二月二日

願書受け渡しまであと約一ヶ月。

* *

尾崎さんが亡くなった次の日から加藤さんは本当に学校に来なくなった。


加藤さんが来なくなってからは標的を天城さんに変えてたけど、受験に対してさすがに焦りだしたのか、みんな何もなかったかのように勉強に集中し始めていた。


あのいじめの日々が嘘のようだ。

みんな悪いのは加藤さんと天城さんで、自分は関係ないと思っているからだ。


* *


昼休み、私は旧校舎の図書室に訪れた。


ここで梶谷さんは尾崎さんと犯人二人の会話を偶然にも聞いてしまった。


確かに旧校舎に訪れる生徒は少ない。


新校舎にある図書室の方が綺麗だし本の種類も豊富で日当たりも良い。


「ここ、死角になるんだ…」


誰かが来ているなんて気づかないぐらいに静かに時間が流れていく。


…あれ、図書準備室の方に誰かがいる。

あの癖のあるロングヘアは水谷さんだ。


「そっか。水谷さん図書委員だ」


でも旧図書室で図書委員の仕事あったかな?私は保健委員だからわからないけど。


「何してるんだろ?」


遠くからだからよく見えないけど多分文庫本を読んでいるだと思う


声をかけようかな?って迷ったけれどやめた。


教室で教科書意外の物を読む事はタブーになっていた(天城さんは気にしてない)


きっと、ここなら誰にも気づかれずに本が読めると思ったのだろう。


犯人の一人は趣味が読書と言われているからね。


読書好きは私のクラスには多いから疑われたくない気持ちで旧図書室で本を読んでいる水谷さんの本の世界の時間を邪魔してはいけないよね。


私はそっと図書室を後にした。


* *


私は放課後のHRが終わると雪村先生に加藤さんに宿題を届けたいと志願した。

加藤さんの家は学校から近いと聞いた事がある。


学校の坂を下って右に曲がり商店街を抜けて喫茶店の近くのマンションに住んでいる。


私を見て雪村先生は顔を顰めていたが直ぐにいつもの表情に戻り


「日比野さんなら大丈夫ね」


聞こえないぐらいの小さな声だったけれど私には聞こえた。


地獄耳なのかもしれない。


雪村先生は加藤さんがいじめられている事を知っているからこそ慎重になって、私が加担(傍観者だけど)していないとわかったから了承してくれたんだ。


やっぱり雪村先生は加藤さんのいじめを無視していたんですね。

雪村先生が教師としての評価を生徒よりも大切にしている事がハッキリとわかり絶望した。


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