もしも、もしも、ね。


「にしても、裕哉君なに考えてんだろうねー。」



私にしか聞こえないような小さな声で望果はそう呟いた。

今度の難しい表情は演技でもなんでもない。

それが分かったから、私も普通に「私も知りたい。」と呟いた。


あの日。

あの文化祭の日。

一日に元彼と再会し、

ユウとの出会いを思い出し、

ユウと別れ、

ユウを好きだと気付いた、

あの長い一日。

私はもう一度幸せが逃げ切るようなため息をついて、あの日を回想するのだった。





***





あの日がもうすぐ終わろうとしている頃だった。

いろいろありすぎて寝れない私はベッドに横になっていて。

そんな時、突然手元に合った携帯が震えたのだ。

面倒くさいと思いながら手に取る。



『着信:篠田裕哉』



その文字が携帯のディスプレイに表示されているのを見た瞬間、夢かと思った。

現実が夢か、それとも別れたことが夢だったのか。

一瞬そんなことが頭を過ぎったけれど、私に迷いは無かった。

すぐさま携帯に出る。



「も、もしもしッ!!?」



電話の向こうの声は笑っていた。

それから、



『何慌ててるんだよ』



と至って普通に・・・いや、多少普段より柔らかいか?

とりあえず、夢だったのは別れたことだったのだと思わせるような声だった。

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