もしも、もしも、ね。

「え?」と問いかけると、佐久間君は「いや」と頬を掻いた。

視線を少し揺らしてから、小さく口を開く。



「めずらし、っていうより久しぶり、なんかな。

今の裕哉、めっちゃ寂しそうだったじゃん?」

「え?」



私は驚きで目を瞬かせた。

寂しそう?なんで?怒ってるとか呆れてるじゃなくて?

誰が?ユウが?

私が驚いているのを見て、佐久間君はにやりと笑った。



「いくら彼女でも俺たちの友情には敵わないだろ?」

「いや、そっちじゃないっつの。」



私の気持ちを代弁するように、望果が裏手ツッコミ。

そういえば、佐久間君とユウは小学校から一緒の仲良しなんだよね。

冷やかす男子の中で、唯一佐久間君は「俺の裕哉がー!」と嘆いていた。



「ま、それはおいておいてさ。俺には寂しそうに見えたけど?」

「私、無表情にしか見えなかったけど・・・。」

「だーかーらー。俺の方がそういうの見破るのは正確に決まってんじゃん。」



うん、だろうね。

え?じゃぁ、本当にユウは寂しそうな顔をしていたっていうの?



「やっぱさ、裕哉はお前にバトン貰いたかったんじゃないの?」

「―――ま、まさか・・・。」



私は小さく笑った。

まさか。

だって、私迷惑ばっかりかけてたんだもん。

嫌いな奴なのに「ざまぁみろ」なんて言えなくて。

どんなに嫌いでも、邪魔してるってわかっていつも申し訳なさでいっぱいだった。

私たちがリレーの中盤とかならまだしも、アンカーだからなおさら。

選抜リレーだからなおさら。

嫌いな奴と離れて清々した、なんてちっとも思えなかった。

だから本気で一生懸命だったの。それでもいっつも出来なかった。

今回はユウが「清々した」はずでしょ?


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