クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ

「髪、食ってる」

 唇に乗った髪を指先で払うその仕草に、見ているだけで心がざわめく。
 彼はそのつもりじゃなくても、“もしかしたら”に賭けたくなるその気遣いも、私は知っている。


「本気って言ったら、信じてくれる?」

「そういうの、悪い男の常套句じゃないですか」

「本気じゃなきゃ、こんなことしないって言ってんだよ。誰かに見られるリスク背負ってでも、抱きたいって気持ち伝わらないかな」


 どこかで似たような台詞を聞いて、背中に冷えた汗が伝う。


 そして、思い出が駆け巡り、彼とのあれこれにしがみつく自分を厭になった。



 馬鹿みたい。
 こんな男に執着してたなんて。

 みっともない涙を部長に見せて、悔しくてどうにかしたいともがいて。

 仕事にまで影響させて。


 先輩に言われたように、仕事漬けになって男っ気なんて皆無のほうが数倍よかった。



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