クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ
エレベーターを待つ間、豪勢な大理石の通路を比較的最近下ろしたばかりのピンヒールで細かく鳴らす。楽しみにしていた気持ちが行き場を失くした苛立ちと、するりと逃げ交わす最中の焦りが入り混じっている。
すっかり夜景が支配した硝子の向こう。そこに映りこむ自分を眺めては、何とも虚しい気持ちになった。
新しい出会いを期待しているから、こんな集まりにたくさんの人が顔を出す。その中にいる自分だって、全く期待していないかと言ったら違うのだ。
知的な人と実のある会話をしたいだけなんて綺麗ごとで片付くほど、心の中は善良じゃない。
音もなくやってきたエレベーターに乗り込み、地上階を示す“G”を押す。また地味な自分を演じる日々が始まると思うと可笑しくて、自分を嘲笑してしまいそうだ。
「……逃げるつもり?」
柏原さんが閉じかけの扉に指を掛け、するりと乗り込んできた。