クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ

 自席に戻り、誰もいないフロアに1人残る。

 もういいと言われても、自分の中ではキリが悪いのだ。


 今夜は部長が先に帰宅することになるんだろうな……。
 私が先だったら出迎える約束なのに、部長が先だと何もないのはどうしてなのか、今日あたり聞いてみようかな。



「お疲れさま」

「……お疲れ……さま、です」

「そんな驚かないでよ」

「もう誰もいないと思っていたので」

「そう?俺のとこ、まだいるけどね。さすが千堂部長の下はきっちりしてるなー」


 勢いよく入ってきたのは柏原さんで、一瞬でも部長かと思ってしまった気まずさを隠す。


「結衣、1人?」

「はい」

「なにしてんの?」

「企画を練ってるところで」

「あぁ、前に話してくれてたアレ?」

 前、と言って平気でつき合っていた頃を出してくるのは、もう何とも思ってないから?


 少しも悪びれる様子のない柏原さんに、種火ほどの小さな明かりでも思い出を灯していた自分に呆れる。


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