クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ

「ただいま帰りました」

「おかえり」

 リビングで寛いでいた部長に声をかけ、自室に入る。


 洗面室で手を洗ったら、部長が着ていたYシャツをバスケットに見つけた。

 廊下から顔を出して、見えはしないもののリビングにいる彼の様子を探る。パソコンのキーボードを打つ軽快な音がするから、集中しているに違いない。



 控えめに指先でつまみあげ、数秒見つめて意を決する。
 くしゃりと簡単に馴染んだシャツが、私に寄り添った。


 部長の匂い。香水の残り香。誰のものか知らない煙草の匂いはしなくて、思い切り吸い込んだ。



「……なにやってんの、お前そういう趣味?」

 完全に身体を固め、振り向きもできない私は鏡越しに彼の顔を見た。


「そんなに嗅ぎたいなら言えよ。フレッシュなほうがいいだろ」

 Yシャツを抱きしめたままの私を、部長が壁に追いやる。
 フレッシュとかそういうことではないんです。部長の匂いだからいいのであって……。


 私の好きなものが、狭い空間に詰め込まれて目眩がしそうだ。
 部長の身体、爽やかでほんのり甘い香水、Yシャツの匂い……。


「どうぞ、思う存分」

 屈んで囁くと、彼は私を抱きしめた。



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