クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ



 商品企画部長も兼任するようになったら、必然的に瀬織さんと毎日接するようになった。



「今日もありがとう」

 誰よりも早く出社していたのだと知ったのも、ここに来てからだ。

 部内の簡易清掃のあと、給湯室に行っていたから綺麗に保たれていたことも。
 朝刊を入れ替えたり、片隅に一輪挿しに花を飾ってくれたり。


 そんな彼女に会いたくて、俺も出社がより早くなった。
 誰にも見られていなくても、懸命に尽くす姿を独占したいから。



「もしかしたら、沙良とは結婚しないかもしれない」

「どうして?それじゃ父が立腹するわよ?」

「いいよ、その時はその時だ」


 大して愛情も持ち寄っていないベッドの上。
 自宅に彼女を招く気にはなれず、いつも沙良の自宅に行くばかり。それを不満だと言われたりするけれど、嫌なら別れてくれてもいいと突き放せば、腕を絡めてすり寄ってくる。


 こんな女、微塵も好きになれない。


 もっと譲れないモノを持ってる、凛とした――


 意識せずに、勝手に浮かんできたのは、瀬織さんだった。


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