クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ
1人、地下階へ着いて降り立つ。
日の当たらないコンクリートの世界は等間隔で同じ模様をいくつも描く白線と、まばらに停まっている車だけしかなくて、声を出すことさえ憚られるようだ。
待ち合わせが合っていたか、持ってきた付箋を開く。
少し右上がりだけど、癖の少ない丁寧な文字が現在地を示している。
突然目の前が照らされ、眩しさで顔を背けた。残像になったそれは、まばたきの度に浮かんでは消え、繰り返し邪魔をする。
「お疲れさま」
白のセダンが停まっていて、千堂部長が助手席のドアを開けている。
「お疲れさまです」
「乗って」
戸惑いと緊張のせいで足が動かない。
乗ってと言われても、そんな突然受け入れられる状況でもないし、千堂部長のお誘いというのが現実味をかなり薄くする。