クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ
2つ隣の街にやってくると、お店の駐車場に車が停められた。
あんなことやそんなことは1つもなくて、自分の先走った妄想が恥ずかしくなる。こんな地味女に千堂部長がなびくはずもないのに。
「この店、俺のお気に入りなんだ。時々食べにくるんだけど」
こじんまりとしたイタリアンの店先は、私道にはみ出したテラス席がいくつかある。
「おしゃれですね、とっても……」
「食事も美味しいんだよ」
ドアを開ければ、漂う香ばしさ。チーズとトマト、茹でたてパスタの小麦の匂い……。
思わずお腹が空腹を訴えそうになって、力を込めて封じた。
「愛斗くん、久々だね。いらっしゃい」
「すみません、いきなり予約して」
シェフの格好をした男性は、控えめな顎髭が良く似合っている。
案内された席に向かい合って座ると、真正面にいる部長とまともに目が合って、すぐにそらしてしまった。
メニューを手にして選ぶ部長は、私みたいにドキドキしているはずもない。
だって、私は地味子だし、ただの部下でしかないんだから。