クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ

 部長の車で、会社の地下駐車場へと戻る。デートをしたような感覚は久しぶりで、帰りの車内はほぼ無言だった。
 話しかけようにも、ランチを食べ終える頃には部長の携帯に連絡が入りはじめていたから、楽しく世間話をする余裕はあまりなかったけれど。


「先に戻って」

「はい、本当にごちそうさまでした。美味しかったです」

 改めてお礼を言うと、部長が嬉しそうに微笑んでくれた。



「……!!」

 シートベルトを外し、後部座席に置いていたバッグを取るために身体を捻ったら、同じ行動をとった部長の指先が私の手に触れた。

 それは、ほんの一瞬だったのに、完全に私の思考を止めてしまうほどで……数センチ先の横顔から目が離せなくなった。

 無駄のない輪郭は、男らしさを感じる喉元までが1つの絵のよう。
 筋の通った鼻、だらしなさ皆無の唇との距離。

 つややかな自然な色の唇は、口角がきゅっと上向きだ。

 そして、いつでも真剣さと優しさを灯す瞳は、綺麗なラインの二重と切れ長な目尻が何とも色っぽい。



「これ、さっきの店長からお土産もらったから、よかったら食べて」

「あ、りがとう……ございます」

 手作りのマーマレードジャムと自家製フランスパンのラスクが詰め合わせになった透明の袋を渡され、自分のバッグを持つことなく、真正面に向き直った。



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