【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
その言葉に良くわからないまま頷くと、

「……もしお前が姉ちゃんの為に頑張れるっていうなら、
俺がお前を全力で応援してやる」
その言葉に何だかよくわからないけど、
俺は不安だったけど、
佳代のために何かやってやれるんだって思ったら、
少しだけその不安が小さくなった。

「もし、母ちゃんに何かあったら、
年は上だけど、佳代姉ちゃんの事、守ってやりなよ?」
お前は男の子なんだから……。

母ちゃんが亡くなる10日ほど前、
昼に二人で冷やし中華を一緒に食べている時に、
こんなことを予見していたかのように、
母ちゃんが、急に俺に言ったんだ。
だから……。

「……うん、俺半年ぐらい、別に一人でもやっていけるよ」
そう気づけば言葉にしていた。
その言葉を聞いて、拓海が破顔した。

「……わかった。お前にその覚悟があるなら、
俺がお前の面倒を見てやる」
そう言って、俺の頭をぐしゃぐしゃにかき回した。
「お前は男だからな、
女は守ってやらねぇとな」
そう言って、笑う。

「いてぇよ、先生」
思わず言いながら、
俺は自分がよく知らない、
親父とか、父親ってやつはこんな感じなのかなって、
ちょっとだけ思ったんだ。

それから半年一緒に暮らして、
その後、佳代が戻ってからも、

何かを押し付けたりしない、
くだらないことをグチグチ言わない、

何よりも俺のことを信用してくれて、
俺の言葉を聞いてくれる
俺にとっては信用できる大人は、拓海で。
だから、俺にとっては、拓海ってのは、特別な存在だった。

だから、冗談のように、拓海に、
「佳代と結婚しちゃえよ」って言い続けたのは、
もし拓海が佳代と結婚してしまえば、
俺にとっての身内になるから、
別に佳代の気持ちとか、拓海の気持ちとか全然考えてなくて、
俺がそうなってくれたらいいなあって思っていただけで、
そうなったら、多分何年かしたら、
島から出て行ってしまうかも知れない拓海に対して、
何かしらのつながりが欲しかったから言った、
単に子供の我儘みたいなもんで。

でも言う度に、
何とも言えない複雑な表情をする拓海が気になっていた。
そのうち、複雑な表情に、何とも言えない苦い色が混じるのに、
少しずつ、オトナの事情、ってやつが
世の中にあるってわかり始めたころから気づき始めていた。
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