【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
そんな子供じみた俺の希望とは別に、
気づいたら、いつの間にか、
佳代が拓海のことが、好きになっているんじゃないかって気づいた。
……多分、拓海が佳代を好きになっていることにも。

だけど、何かがそれを邪魔している事にも。

拓海が骨折をしたとき、
佳代は毎日楽しそうに料理を用意して、
それを届けに行ってた。
拓海と出会ってから、一番幸せそうな顔をして、
笑みを浮かべて、嬉しそうに料理を作っていた。

だから、このまんま
上手くいってしまえばいいのに、って
そんな風に思っていたけど、
拓海の怪我が治った後ぐらいから、
佳代はこっそりとため息をつく時間が増えてきて、

だから、きっと何か見えないもののせいで、
ダメだったんだろうなってそんな風に思っていた。
好き同士なのに、なんでダメなんだろう?
俺にはオトナの事情って奴が全然理解できない。

そんな風に思っていた矢先のこのメールだから。

佳代はすげぇ真面目だ。
だから、よっぽどのことがなければ、
きっと、男のところに泊まったりしない。

……女が男のところに泊まるって、
それがどういう意味があるかってーのは、
身近すぎて、あんまり想像したくないけど、
まあ、そう言うことかなと思う。

だから、拓海が俺のところに来るんだろうか?


そんな俺の思考をさえぎるように、呼び鈴が鳴った。
偉く機嫌の良さそうな、
だけど何処か不安そうな顔をして、拓海が顔を出す。

「起きてたか?」
そう尋ねてくるから、そのまま扉を開けて、彼を招き入れる。

「……佳代は?」
そう尋ねると、
「ちょっとヤボ用を片づけてもらってる……」
そう言って、俺が入れた冷たい麦茶を一気に飲み干す。

「あ。あのな……」
一瞬躊躇ってから、最初逢った時みたいにまっすぐな瞳で俺を見る。

「……お前の姉ちゃん、俺が貰ってもいいか?」
少しだけ不安そうな顔をして言うから。

「…………ヤダネ」
一言そう言いかえすと、彼が一瞬黙り込む。
「……隼大……」
大人の顔をして、俺をやり込めるのかと思ったら、
俺に向かって、机近くまで頭を下げやがる。
しょうがないから、ヒントを一つやろうか。

「拓海……俺じゃなくて、
先に報告するべき人間がいるだろ?」
俺がそう言うと、はっと彼が顔を上げる。
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