【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
「大体、美味しそうな小鹿が、
狼の前でうろうろしているようなもんだ……」
……食われるのは時間の問題ってな……。

湯上りのいい香りを漂わせて、
美味い食事を用意して、
お前自身がデザートか、なんて……。

……いっそ貪り食ってやろうか、と
くだらねぇ妄想をして苦笑が漏れる。

ただ。
……こんな嫁が家で待っていたら、
たまらねぇだろうな、
と、ふと思うことがある。

食われたくねぇなら来るな、
と言えば良いだけなのだが、
アイツが悲しい顔をするだろうからな、
などと言い訳している。

だが、本質的には、
俺がアイツを傍に置きたいだけなのだと、
他の男を近づけさせたくないと、
そんな風に思っていることに
頭のどこかで気づいてる。
俺の傍に置いておけば、
その分他の男のところに行く可能性が減る。
だから、自分の手元に置いておきたいのだ。

一瞬、この間の、貴志とのキスシーンが
脳裏に浮かぶ。


あの日の夜。
佳代は……。

……あの男のモノになったのだろうか?

そう思った瞬間、
カッと何とも言えない感覚が身の内に浮く。

「意外と天罰はこれかもな……」

ぎゅっと目の前で指先を握りしめる。あの男に妬けば妬くほど、
……自らのモノにしないと不安で仕方なくなる。
どこか、暴力的な欲望に、
それでも、自らの理性が、
これ以上男に怖い思いはさせたくないという思いが、
……嫌われたくはない、そんな思いが
何とかそれを抑え込んでいる。


結局は葛藤するばかりだ。
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