マイノリティーな彼との恋愛法
風花ちゃんの目は思いのほか本気モードで、心なしか瞳に炎まで見えそうなくらい熱く燃えていた。
……なるほど、彼女の優しさってわけか。
「トリプルチェック、忘れずに出来る?」
「もちろんです!春野さんに教えてもらったことは、今回はしっかりメモしてますから大丈夫です!」
「………………分かった」
数ヶ月前まではミスを立て続けに起こして問題視されていた風花ちゃんが、素晴らしい変貌を遂げた瞬間だった。
これぞまさに、恋のチカラってやつ?
プライベートが充実すると仕事も充実すると言うけれど、本当なのかもしれない。
「じゃあ、申し訳ないけどお願いしてもいいかな。私は仁科課長に早退の届出を出してくる」
「はい、分かりました!」
課長のデスクまで少しの距離しかないのに、やけに遠く感じた。
意識はあるけど、かろうじて残ってるだけであって立ってるのも辛い。
早く帰って寝よう。
いやいや、その前に病院に行って点滴を射ってもらって、薬ももらった方がいいかも。
課長や風花ちゃんに見送られて、私はフラつく足で会社を早退した。