マイノリティーな彼との恋愛法


夢の中の私が、ポロリと涙をこぼす。
頬を伝った涙はやけに冷たくて、キンキンに冷やした保冷剤みたいな尖った冷たさで。

涙ってあったかいものじゃなかった?



そこで、ハッと目を開けて、真っ暗になった部屋で体を起こす。

ちょっと前に見ていた夢の内容は、あまり詳しく思い出せない。
モヤモヤした霧の中を歩いて〜……で、なんだっけ?

電気をつけて壁掛け時計で時間を見ると、夜の8時を過ぎていた。

昼前に帰ってきて、そこから爆睡していたらしい。


グレーのスヌードはそのままに、白のハイネックニットとしわくちゃになったワインレッドのスカートを見下ろして、はは、と笑いが溢れた。
とんでもない格好で寝てたなあ。


神宮寺くんとの出会いを無かったことにしたいなんて、そんなの本心じゃないくせにね。
だって、私はまだ彼に会いたいって思ってるんだもの。


じわりと滲みそうな涙を我慢して、昼間よりはだいぶマシになった体を動かした。

背伸びして、肩を回して肩甲骨を刺激し、ポカリをグビグビと一気飲みする。お正月に帰った時に実家からたくさん持たされたみかんを2つほど皮をむいてムシャムシャ食べ、続けざまに薬を飲んだ。

熱を測ってみたら平熱。
よしよし、解熱剤はもう飲まなくてよさそうだ。


鏡を見たら、髪の毛が顔に張りついていて汗をかいていることに気づいた。どうやら汗をかいたことで熱が下がったらしい。

クローゼットを開けて部屋着の上下スウェットと、手前にあった下着を見もせずに手に取って浴室へ向かう。

熱いシャワーを頭のてっぺんから一気に流して、頭がスッキリしてきた。


「あー生き返る」


今晩しっかり休めば、明日はちゃんと仕事に行けそう。
風花ちゃんにもお礼を言わなくちゃ。


お風呂から上がって洗面所で体を拭いていると、玄関から『ピンポーン』というインターホンが聞こえてきてビックリした。


なに、この時間に?宅配便?
実家からの荷物だと、時間指定を一番遅くしてもらってるからその可能性が高い。


「は、はーい!ちょっと待ってくださいねー!」


濡れた髪の毛を素早く束ねてお団子にし、まだ拭き切っていない体に素早く下着をつけて部屋着を着る。
足元が冷えるので、そのへんにあった靴下をササッと履いた。


シューズボックスの上に置いている印鑑を握りしめて、ドアロックを外してなんの迷いもなくドアを開ける。

びゅうっと雪混じりの風が玄関に吹き込んできて、身震いした。


「━━━━━こんばんは」


低い声と共に目の前に現れたのは、夢なのか現実なのか、メガネをかけていない神宮寺くんだった。



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