マイノリティーな彼との恋愛法


人が咳き込んで苦しんでいるのを、神宮寺くんは楽しそうに口元を綻ばせて眺めていた。
なんて性格の悪い男なんだ!

無理やり飲んだ日本酒が、ぬるっとした感触で喉に貼りついているような気がしてならない。


「どんだけ苦しいと思ってるの!?不意打ちでそれやるのやめてよね。喉に詰まってなんかあったら責任取ってよ」

「分かりました。その時はきっちり責任取ります」

「涼しい顔で適当なこと言うんじゃないっ」


正直、突っ込みたいのはそこじゃなかった。
無感情(私を困らせて楽しんでいるようにも見えるが)の「アーン」よりも、あれだけ好きだの愛してるだの言ったことがないと言っていた男が、すんなりと私の食べる姿は好きだと口にしたことの方がよっぽど重大だと思うんだけど。

そういう意味の好きじゃなくたって、プライベートが寂れている私にはかなりこたえた。色々な意味で。




のちに届いた蓮根の素揚げとはらこ飯。
適当に自分が食べたい分を取って食べている私に、本日何杯目か分からない日本酒をごくりと飲んだ神宮寺くんが話しかけてきた。


「ずっと思ってたんですけど、春野さんって料理を取り分けない人ですか?」

「…………ん?なに?どういうこと?」

「合コンの時から思ってたんです。率先して小皿に取り分けたりしない人なんだなぁって。よく女の人ってこぞってみんなの分を綺麗に等分しますよね」

「あー、それね」


モテる女子テクってやつか。
大皿で運ばれてきた料理を、手早く人数分きっちりと取り分けるという「気の利く女アピール」。


「悪いけど、私はそういうのしないの。やってって言わればやるけど、普段は自分からはしない。自分の食べたい量を取って好きに食べればいいと思ってるから。足りなくなったらまた頼めばいいし」

「なるほど」


明らかに、ここで神宮寺くんの表情が少し変化した。
無気力な目にほんの少し光を見つけたような感覚だった。

え、もしかして私、興味持たれてる?


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