マイノリティーな彼との恋愛法


「じゃあ参考までに聞くけども。あなたはこれまでどうやって女の子と付き合い始めたの?言わなかったの?付き合ってください、とか。それこそ好きとか、愛してるとか、これっぽっちも言ったことないの?」


一気に質問を投げかけたせいか、それともその内容をくだらないとでも思ったのか、神宮寺くんはあからさまに嫌そうな表情を浮かべた。
だけど私の興味も止まらない。


「そこんところどうなの?むしろ女の子の方から付き合ってって言われたとか?」

「えーと、どこから答えればいいか……」

「どこもなにも、全部答えなさいよ」

「……平たく言えば、今まで生きてきて付き合おうだの好きだの愛してるだの、一度も言ったことはないですね」


湯気が立ちのぼる熱々おでんの玉子をふたつにお箸で割りつつ、彼が答える。
なんだか私の質問よりも、どれだけ綺麗におでんの具をお箸で切れるかという方が重要なことだとでも言いたげに、視線は完全に手元に向けられている。


「じゃあ、今までは成り行きで付き合ってたってこと?」

「さぁ、たぶんそうなんじゃないですか」

「うっわ〜、なにその答え方。今まで付き合った子が可哀想だわ〜。ちゃんと言葉にしないと伝わらないこともあるのよ?好きって言ってあげないとね」

「ほら、そういう風に言う。だから面倒くさいんですよ。その瞬間に冷める」


冷めると言いながらも、熱々のおでんを食べてる姿はミスマッチで笑えた。
しっかり汁が染みた色になっているおでんの具は、どれこれも美味しそう。

私にもちょうだい、とお皿を出すとリクエストしていた大根をふたつと、はんぺんとちくわを乗せてくれた。


大根をひと口サイズに切り分けていると、何かを思い出したのか神宮寺くんが「あ、そうだ」と言った。


「春野さんの食べてる姿は、わりと好きですけどね」


言われた瞬間、口に入れた大根を吹き出してしまった。


「あ、あっつーーー!」


めちゃくちゃ熱いのに加えて、サラッと好きとか言われて激しく動揺した。
私が吹き出した大根は、うまい具合に空いてるお皿にポンと乗って、それを神宮寺くんがお箸でつまんだ。

そして、それをフーフーとわざわざ冷ますと、まだ動揺している私の口に無造作に突っ込んできた。


「ちょ、ちょっと!………モグモグ」

「美味しいですか」

「お、美味しいけど……モグモグ」

「口いっぱいに詰め込んで、幸せそうに笑ってる顔はなかなかいいと思いますよ」

「モグモ…………ゴホッゴホッ」


最後は涙目で飲み込んだ。


まただ。
1ヶ月前も、こいつに「アーン」をやられたことを思い出した。
今日もやっぱり色気も何も感じられない、淡々としたものだったけれど。


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