マイノリティーな彼との恋愛法
女将さんみたいに品があって、聞き上手で、そして優しい笑顔の人こそ本当にモテる人なんだろうなと思う。
こういう癒し効果のある人を男性は求めているんじゃなかろうか。
「そうだ。ひばりちゃんはどんな人が好みなの?よくドラマで見るような俺様タイプの人?俺について来い、みたいな?」
好みのタイプを尋ねられると、決まって話していたこと。
包容力ある年上の人で、好みの俳優みたいな顔で、スーツが似合っていて、無精髭も似合っていて、隠れマッチョで、タバコを吸う姿が渋くて。
拳銃構える姿がかっこよくて、声がセクシーで、笑顔がクシャッとなる人。
どう考えてもそんな人はいないってことは、当然もう分かっている。
というか、無理を承知で豪語していた。
エベレストのような理想の男性像だと言われようがなにしようが、あくまで理想なんだからいいじゃないって思っていた。
だけど現実的に考えて、私は本当は恋人に何を求めているんだろうと考えた。
ドキドキ感?ときめき?
癒し?それとも温もり?
安心感?居心地の良さ?
何が正解なの?
「自分の好みがどんななのか、人を好きになるってどんなだったのか、最近分かんなくなってきたんですよね……」
グラスに少し残っている氷を眺めながら、ぼんやりとつぶやく。
え?と女将さんが聞き返してきたので少しだけ視線を上げたら、とても楽しそうな顔をした彼女が私を見つめていた。
「これと言った決め手がない場合、その人を好きだと決めるキッカケってなんだと思います?気になるんです、ただただ気になるんです。好きなタイプと1ミリもかぶらないのに」
私も女将さんを見つめる。
上品にメイクした彼女の表情は、心なしかちょっとウキウキしたようなものにも思えた。
直接的に話しているわけではないけれど、もしかしたら彼女には色々とバレてしまっている……かも?
「四六時中気になるわけじゃないんです。お昼休みとか、ちょっと席を立った時とか、家でボーッとしてる時とかに気になるんです。今頃何してるかなー、とか」
「うんうん、なるほど」
何度かうなずいた女将さんは、にっこり笑った。
なにか革新的なものを得たような顔で。
「その人と、少しずつ距離を縮めてみたら?焦らずに、ゆっくり。そうしたらきっと分かるんじゃない?」
………………距離を縮めるって言われても。
連絡すら出来ないんですけど。
と、言えるわけもなく、そうですね、と力なく返事をした。