マイノリティーな彼との恋愛法


………………2時間後。

侘しい気持ちのまま帰っても虚しさを増幅させるだけだと踏んだ私は、万に一つの可能性かもしれないけどもしかしたら神宮寺くんが来ているかもしれない!と期待を込めて、駅前東口にある居酒屋「酔いどれ都」へ来ていた。


ビールを飲んで、焼酎を飲んで、日本酒を飲んで。

1人なので当然カウンター席。
時々女将さんが私の相手をしに声をかけてきてくれる。

見事なまでに、おひとり様。
「正真正銘一人ぼっち」。

神宮寺くんの姿は無かった。


「先週の金曜日は来たのよ、渉くん。仕事忙しいのかしらねぇ」


もういったい何杯目なのか分からないお酒を飲んでいると、藤色の綺麗な着物が眩しいほど似合う女将さんに話しかけられた。

別にヤツを待っていると話したわけじゃないけれど、空気で伝わってしまったのか?
だとしたら妙にムズムズして、恥ずかしい。


「あっ、それとも待ち合わせしてる?」


少し慌てたように右手を口に当てて申し訳なさそうにうかがってくる。
いえ、と首を振った。


「待ち合わせはしてません。たぶん、私のことはヤツの頭の片隅にも残ってないと思います。もう一緒に食事する義理も無くなったし。もしかしたらまた人数合わせで合コンに呼ばれてるかも……」

「えー!渉くんが合コンに行くことなんてあるの!?信じられないわ」

「そもそも私たちの出会いも合コンですもん。……まぁ、その前に色々ありましたけど」

「あらまぁ」

「お互い人数合わせで来てただけの、白々しい飲み会でしたけどね」


あはは、と苦笑いして鶏肉の油淋鶏を頬張る。
鶏皮がパリッとしていて、油淋鶏のタレと絶妙にマッチしている。相変わらずここの料理は美味しい。


「そんな合コンになんか行かなくても、ひばりちゃんなら男の人にモテるんじゃないの?とっても綺麗だし、性格も明るいし」


優しい女将さんの言葉が身に染みる。
あぁ、彼女のセリフを真空パックにして永久保存しておきたい……ってなんの歌詞だよ!

お客様を持ち上げて気持ちよくするのは、さすが女将さん。
わざとらしくなくて、ほろ酔い気分で聞くとありがたみも増してくる。


「そんなこと言ってくれるの、女将さんだけですっ。実際はもう何年も恋してない錆びたアラサーなんですよーーー」


笑えない事実を語ると、女将さんはフフッと微笑んで「恋を少しお休みしてるだけよ」と名ゼリフを口にした。

誰も相手にしてくれなかった数年が一気に意味があったように思えた。

なんて素敵な発想!!

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