ケダモノ、148円ナリ
「実はあの屋敷にひとつだけ和室があるんだが。
 そこで寝ると自分の身体の横に……」

 ひゃー、と声を上げ、貴継につかまれていた手を片方ふりほどくと、ランプの火を消した。

「こらっ。
 まだ話してないだろうがっ」

「もう充分怖かったですっ」

「いや、待て。

 そうか。
 わかったぞ。

 お前、早く俺と暗い場所で二人きりになりたかったんだな」
と貴継は明日実の腰に手を回し、抱き寄せる。

「はっ、離してくださいっ。
 趣旨が変わってきてますよっ」

 逃げようと悪あがきをしながら、明日実が言うと、

「莫迦だな、明日実。
 男が怪談話をしようと言ったら、そういうことだ。

 趣旨は最初からなにも変わってない」
と明日実を抱いたまま、ろくでもない主張を始める。

 そのとき、奥の方から、ことり……と音がした。

「でっ、出ましたよっ」

 明日実は今、逃げようとしていたはずの貴継の胸にすがりつく。
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