ケダモノ、148円ナリ
 私だったら、舐められそうだけどなー。
 旦那さんにも子どもにも。

 既に貴継さんには舐められ切ってるし。

 って、貴継さんと結婚するわけじゃないけどっ、とワイングラスを手に、ひとり赤くなっていると、一緒にラグに腰を下ろした鏡花がにじり寄ってきて笑う。

「さあ、いろいろ吐いてもらいましょうか」

「えっ?
 なんの話ですかっ」

「声だけでもイケメンっぽい、あの謎の婚約者とやらと、顕人と、その指輪についてよ」
と明日実の手のイルカを指差す。

「あっ、これ、可愛いでしょう?
 水族館で買ってもらったんです」
と言うと、鏡花は渋い顔をし、

「その安物、まさか、婚約者に買ってもらったの?」
と酒を作りながら、訊いてくる。

 明日実には呑み慣れたワインをくれたが、鏡花は水割りかなにかを呑んでいるようだ。

 普段呑まない酒の種類はいまいちわからないのだが。

「安物とか言わないでください。
 可愛いんですから」
と膨れてみせると、

「まあ、好きな人にもらえば、なんでも嬉しいわよね」
と鏡花が言ってくる。

「べ、別に好きな人では……」
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