ケダモノ、148円ナリ
「あ……だ、大丈夫です。
 赤くなって、ちょっと皮がすりむけてるだけなんで……」
と自分の指をもう一度確認し、

「よ、4本全部……」
と呟いた。

 大丈夫かなー。
 入社前研修が始まるのに、と思っていると、貴継は側に腰掛け、
「見せてみろ」
と言う。

 おずおずと手を出すと、そっとその掌をつかんだあとで顔をしかめる。

「こういうの、なんて言うんだったかな、ほら」
と本気で考えるような顔をしたあとで、

「ああ、あれだ。
 イタイノ イタイノ 飛ンデイケ」
と言い出した。

 彼の口からそんな言葉が出てくるのが意外で、ちょっと笑いそうになってしまった。

 と、同時に、誰でも知っているはずのそのセリフがすぐに出て来なかったことに驚いた。

 その視線に気づいたように、貴継は言う。

「なんだ。
 おかしいか。

 昔、一度、家政婦がそう言っていたような……」

 いや、親御さんはどうしましたか? と思ったのだが、突っ込まないでおいた。

 貴継はまだ明日実の手を握っている。
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