ケダモノ、148円ナリ
 ひい。

 こうして、殺人事件って起こるのですね。

 いわゆる、痴情のもつれというやつでしょうか、と思いながら、貴継が殴り掛からないよう抱きとめる。

「おにいさまっ、お早くっ。
 遅刻しますっ」

 いや、問題は、そこじゃねえだろ、という顔で貴継が見る。

「貴継さん、無遅刻無欠勤の貴方もですっ。
 専務になるんでしょうっ?」

 だが、貴継は、ちょっと迷うな、と呟いている。

「殺したくはないが、一発は殴りたい。

 とどまってもらうべきか。
 去ってもらうべきか」

 貴継が苦悩している間に逃げるべきだと思うのだが、顕人は立ち止まり、明日実を見ていた。

 殴られるか、殺られるかの二択の前に居るのも気にならないかのように。

「おにいさま、お願いですっ。
 お早くっ」

 顕人は迷ったようだが、明日実を振り返りながらも出て行った。

「……逃げたか」

 ドアの閉まる音がしたあとで、こちらを向き直り、貴継は言う。

「どうだ。
 嬉しかったか。

 憧れのおにいさまにキスされて」

 そう冷ややかに言ってくるのだが。
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