ケダモノ、148円ナリ
 顕人から手を離したが、明日実は貴継の腕を離さなかった。

「退け」
と静かに顕人は言い、立ち上がる。

「……悪かった、明日実。

 今日、此処に来るまでは、まだ俺にも少しは希望があるんじゃないかと思ってた。

 お前はいつも、俺の後をついて来てくれてたから」

 すまない、と明日実に謝った顕人に、貴継が、
「俺には謝罪はないのか」
と言う。

「お前は俺の首を絞めただけだろうがっ。

 いいか、明日実が泣いたら、すぐに取り返しに来るからなっ。

 いや、二、三年経ったら、明日実はお前に飽きるに違いない。

 その頃、颯爽と俺が現れるから。
 それまで、せいぜい明日実を大事にするんだなっ」

 ……おにいさま。

 なんとなく感謝をしながら、……するべきところだろうかな、と思いながらも、見送ろうとしたのだが、

「待て、顕人」
と去ろうとする顕人を呼び止める。
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