ケダモノ、148円ナリ
「鍵、返してけ」

 顕人は振り向かずに、鍵を投げた。

 だが、ドアが閉まったあと、貴継は呟く。

「……あいつのことだから、コピー持ってそうなんだが」

 鍵を自分のポケットに入れたあとで、振り向き言う。

「ところで、俺と結婚するのか?」

 えっ、と詰まった明日実は、
「あっ、あれは、犯罪者になるのを思いとどまらせようと思って言っただけです」
と言ったのだが、

「いいや、俺は聞いた」
と抱き上げられる。

「きょ、今日は嫌です。
 此処は嫌ですっ」
と明日実のベッドに寝かそうとする貴継に言った。

 またか、という顔をする貴継に言う。

「だって、嫌な記憶とワンセットになっちゃうじゃないですか」

 少し考えた貴継は、よし、と明日実を下ろす。

「じゃあ、もう一度、風呂に入って寝ろ」

「はい」
 ありがとうございます、と言おうとしたら、腕時計を見、

「一時間したら起こすから」

 もう明日だから、と言い出す。

「……やっぱりケダモノじゃないですか」




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