ケダモノ、148円ナリ
「でも、貴継さんは笑っていてください。

 笑ってる貴方が好きなんです。

 ……ま、貴方の場合、高笑いが多いですけどね」
と言ってやったのだが、貴継は、

「やっと好きって言ったな」
と目を閉じ、笑う。

 どきりとしてしまう笑みだった。

 たまに見せるやさしげな表情。

 だが、貴継は、そのまま明日実の上に乗ってこようとする。

「こ、此処は嫌ですっ」

「いや、もう無理だ。
 お前ももう、痛いとか怖いとか言わずに諦めろ」

「痛いのも怖いのも嫌ですよーっ」

「じゃあ、一生、そのままで居るつもりかっ」
と怒られる。

 明日実は迷いながらも、
「でも、さっき……どうせ痛くて怖いのなら、貴継さんがいいな、とは思いました」
と赤くなりながらも言う。

 あのとき、もし、もう一度、貴継に会えるなら、これだけは伝えなければと思っていたのだ。

 オーバーな、と思われるかもしれないが、実際、顕人の変貌具合に、殺されるんじゃないかと思っていたから。
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