ケダモノ、148円ナリ
エピローグ
 



 日曜日。
 明日実は、貴継の母と姉と会うことになった。

 うーむ。
 いまいち、鞄が似合わない。

 あのクローゼットの鏡の前で、鞄を持ってみていた明日実は、そうだ、もうひとつあったな、と棚の奥からミントグリーンの鞄を出してくる。

「明日実、早くしろっ」
と玄関先から貴継が叫ぶ。

 はーい、と言いながら、鞄の中身を入れ替えようと開けてみた。

 うっ、飴とか溶けてる。

 最近、使ってなかったらな、と思いながら、とりあえず、ティッシュや溶けた飴を机の上に出すことにした。

 机の上には、立派なケースに入ったあのイルカのリングが置かれている。

 ティッシュにハンカチに……

 ハンカチ、いつのだ、これは。

 それと、レシート。

 レシート?

「……」

『ケダモノ 148円』

 やはり、ケダモノに見える……。

「明日実、早くしろっ」

 それを机に置こうとしてやめ、財布にそっと入れた。

 あとで貴継さんに見せようっと。

 明日実は、目のところが石になっているイルカのリングのはまった手で鞄をつかみ、その部屋を出て行った。

「はーい。
 今、行きまーすっ」






                                  完



< 375 / 375 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:411

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

同窓会に行ったら、知らない人がとなりに座っていました

総文字数/122,008

恋愛(ラブコメ)521ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「同窓会っていうか、クラス会なのに、知らない人が隣にいる……」  クラス会に参加しためぐるは、隣に座ったイケメンにまったく覚えがなく、動揺していた。  だが、みんなは彼と楽しそうに話している。  いや、この人、誰なんですか――っ!?  スランプ中の天才棋士VS元天才パティシエール。  tomomocake様、素敵なレビューありがとうございましたっ(⌒▽⌒)
冷徹宰相様の嫁探し

総文字数/36,870

ファンタジー77ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)
「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」

総文字数/122,621

恋愛(オフィスラブ)328ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「この店がうちの食卓となればいいんですよ!」  ある日の仕事帰り。  疲れていた|花守環奈《はなもり かんな》はいつもと違う場所で足を止めた。  チャトラの猫が歩いていくのを目で追っていた環奈は、細い道の向こうにあるカフェに気がつくが――。  偽装結婚ラブコメディ。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop