【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
「今日、会ったらまず謝りたいって思っていたのに、変に試すようなことをしてしまって」
試すようなことって、女の子と話していたこと……?
「益々引っ込みがつかなくなって、どうしようと思ってたら、先輩が後藤と仲よさそうにしてるところ目の当たりにして、やばいって思いました」
那月くんは、苦しそうに顔を顰めた。
「あいつモテるし、俺なんかよりいいやつだし、先輩が取られるかもって……」
那月くん……。
見たこともないほど不安げな那月くんを、思わず抱きしめてしまいたくなった。
いつも、年下なことを忘れるほど堂々としている那月くんが、眉の端を下げている。
こんなに不安そうな那月くん、見たことない。
「これが……俺の情けない、経緯と本音です」
くしゃっと前髪を掻いて、顔を隠した那月くん。
私は何から話せばいいのか、なんて言えば今すぐに那月くんの不安を取り除いてあげられるのか、気の利いた言葉が見当たらない。
「俺……この先もずっと、先輩以外の人を好きになれない」
私が那月くんに渡す言葉を考えている間に、那月くんがぽつりと呟いた。
……え?
私を見つめる那月くんの顔は、さっきよりも頼りなさげで、泣き出してしまいそうにも見えた。