【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
「わかるんです。俺には貴方だけだって。先輩にとってはそうではなくても、俺には貴方しかいない」
ぽつぽつと、雨粒が溢れるみたいにぎこちなく紡がれるセリフ。
「こんなにも誰かに焦がれたのは初めてなんです。……いや、先輩を好きになって、初めて自分の中にこんな感情があったんだって知りました」
那月くん……。
「俺の描く未来には、どうしても先輩がいてほしい……先輩以外の人なんて、考えたくもない」
「……」
「お願いです。俺、先輩に飽きられないように頑張ります。だから……これからもそばにいてくれませんか」
切実な、切羽詰まったような那月くんの声。
気の利いた言葉なんて、きっといらないんだ。
那月くんが今私に求めているのは、きっとそんな考え尽くされたようなセリフじゃない。
もっとシンプルで、まっすぐな言葉。
私は、うつむいてしまった那月くんの頬に手を添えた。
「私は……」
不安げな瞳が、再び私を映す。
視線が交わったことに安心して、ゆっくりと口を開いた。
「那月くんが好きです。那月くんだけが好き」
どうして那月くんがこんなふうになるまで、気づいてあげられなかったんだろう。
でも……私は嫌な女。こんな那月くんを見れて、嬉しいって思ってしまう自分もいる。
私のことで、こんなにも弱ってしまう那月くんが、今は愛おしくて仕方がなかった。
そっと、自分の唇を寄せる。