【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。


「爆発?」

「レスは浮気の原因にもなるんだから」

「う、浮気……」



那月君に限って、そんな不誠実なことはしないと思うけど……。でも、もしそんなことになったら、私のせいになるのかな。


「だって……怖いんだもん」


今の今まで、恋愛とは無縁の世界で生きてきた。

キスも抱きしめられるのも、それだけで精一杯なのに、その先なんて……。

未知の世界すぎて、目眩がする。

額を押さえる私を見て、お姉ちゃんはもう一度深い溜息を零した。


「なーに中学生みたいなこと言ってんのよ。本当に、あたしの妹のくせにどうしてこんな風に育ったかねぇ……純粋培養なんてした覚えないのに」


ちゅ、中学生……御尤もだ。

なんの否定も出来なくて、下を向いた。



「今時付き合ってなくてもすることしてるわよ」

「あ、ありえない……」

「あんたがズレてんのよ。……あ、もうこんな時間じゃない。早く用意しなさい、いつものお店だから」

「うん……」


とりあえず、この話はまた今度にしよう。

今はお食事会の準備をしないと思い、私は支度を急いだ。


****


「ねぇ百合香」

「ん?」


タクシーで、いつものお店に向かっている最中。


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