【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
「爆発?」
「レスは浮気の原因にもなるんだから」
「う、浮気……」
那月君に限って、そんな不誠実なことはしないと思うけど……。でも、もしそんなことになったら、私のせいになるのかな。
「だって……怖いんだもん」
今の今まで、恋愛とは無縁の世界で生きてきた。
キスも抱きしめられるのも、それだけで精一杯なのに、その先なんて……。
未知の世界すぎて、目眩がする。
額を押さえる私を見て、お姉ちゃんはもう一度深い溜息を零した。
「なーに中学生みたいなこと言ってんのよ。本当に、あたしの妹のくせにどうしてこんな風に育ったかねぇ……純粋培養なんてした覚えないのに」
ちゅ、中学生……御尤もだ。
なんの否定も出来なくて、下を向いた。
「今時付き合ってなくてもすることしてるわよ」
「あ、ありえない……」
「あんたがズレてんのよ。……あ、もうこんな時間じゃない。早く用意しなさい、いつものお店だから」
「うん……」
とりあえず、この話はまた今度にしよう。
今はお食事会の準備をしないと思い、私は支度を急いだ。
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「ねぇ百合香」
「ん?」
タクシーで、いつものお店に向かっている最中。