柔らかな彼女
午後、取引先をまわる移動中、さあやにメールを打つ。

今から、出かける。とか、今から帰る。とか。
さあやは、仕事中は私用の携帯は使わないと言っていたから
返信が来るのは、定時後だろう。

彼女から、今からてまりに行くとメールが来たので、俺も
後で行っていいか返信する。

彼女からの返事は・・・だめ・・・

でも、合鍵使って彼女の部屋で待ってていいってメールが来て
小躍りしそうに嬉しくなる。

そうだ、うちに着替えとりに帰るついでにさあやの喜びそうな
もの買っておこう。

ってあれ?俺まだあんまり、彼女のことしらないよな。
付き合い始めて一日半。
何がいいんだろう。
酒は好き、食べ物の好みは?あんまり好き嫌いないって言ってた。

甘いものは好きかな?

なんだかんだで、八時まで残業して一旦自宅に戻った。
着替えを、用意・・・
これ、図々しいかな?
下着、靴下、ワイシャツ、ネクタイを各三枚とスーツ着てるのの
他に一着。それから、部屋着用のスウェット上下を旅行鞄に詰めていた。
なんなら、今週末まで泊まれる用意?

荷物が大きくなったので、一度彼女のマンションに荷物を置いて
近所のスーパーに、買い物にでた。
冷蔵庫の中にはビールは冷えてたけど、俺たち二人じゃすぐなくなる。

重いのも、買っといてあげよう。と、缶ビール12本と赤ワイン。
惣菜コーナーで、何品か見繕ってかごにいれた。

ずっしり重い、スーパーの袋を両手に下げて、歩いていると

「須藤さん!!」

と呼ばれ、振り返る。
そうだ、ここは会社の最寄駅。時間は九時。さあやんちは
駅近だから、この時間は会社のやつがうろうろしてる。

オレに声をかけたのは、たしかカズの課の三つか四つ下の子だ。
その後ろに、三人ほど見たことある女の子。

「私たち、今日同期で飲んでたんです。知ってます?
てまりってお店、今日初めて行ったんだけどお料理美味しくて
よかったですよ。今度ご一緒しませんか?
あれ?須藤さんてお近くに住んでいるんですか?」

俺の手のスーパーの袋をみて、首をかしげる。
って、てまりいってたのかよ?うらやましい。

「あーっ、近くに彼女んちがあるんだ。酒の買い出し。」

軽く袋を持ち上げて言う。

「えっ?須藤さん彼女いるんですか?前に田川さんに聞いたら
いないって言ってたのに。」

「うん、最近できた。じゃ。」

と、その後ろの子たちにも軽く頭を下げマンションに帰った。




< 27 / 36 >

この作品をシェア

pagetop