イジワル副社長と秘密のロマンス

樹君と初めて会ったのは小学校六年生の時だ。

その頃から彼のクールさは変わってない。何一つ変わってない。

とてもじゃないけど、“お兄ちゃん大好き”なんて言うようなキャラではなかった。

だとしたら、社長の言う樹君はもっともっと幼いころの樹君ということになる。

ちらりと樹君を見れば、ばちりと視線が合った。

今の格好良い彼から幼い彼を想像する。間違いなく可愛いだろうという結論を、頭の中で導き出した瞬間、ぺちりと額を叩かれた。


「ねぇ、今、変な妄想してたよね?」

「してないよ! 可愛かっただろうなぁなんて、そんなこと絶対に思ってない!」

「……千花」

「樹はね、本当に可愛かったんだよ」

「兄さんは黙ってて。今すぐ部屋から出て行って」


樹君を中心に賑やかに話をしている最中、視界の端で誰かが足を止めたことに気が付いた。

ゆるりと顔を向け、息を止める。廊下からこちらを覗きこむ格好で、星森さんが立っていた。どうやら社長は室内に入ってきた際、扉を閉めなかったらしい。

彼女の瞳は樹君と、そして彼の腕の中にいる私に向けられている。表情をこわばらせている。


「……星森さん」


思わず名前を口にすると、樹君と社長も扉の方へと顔を向けた。


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