イジワル副社長と秘密のロマンス
「そうだけど?」
樹君が“イエス”と答えると、星森さんが微かに肩を落とした。
「いつから、おふたりは……」
ほんの数秒、沈黙が流れた。彼女から放たれる緊張感が私には息苦しくてたまらない。
腰掛けていた自分のデスクから離れ、樹君が私の横に並び立った。彼が星森さんに視線を定めたまま、私の腰に手を回す。そっと引き寄せられた。
「俺はずっと好きだった。ずっと、千花のことを思いながら生きてきた。これからも変わらない。彼女だけを思い続けながら生きていく」
彼の一言一言が強く鮮やかに、それでいて優しくじんわりと、心に染み込んでくる。
遠い昔、樹君と過ごした夏。初めて人を好きになった夏。とても輝いていた。
怒ったり、笑ったり、悲しかったり、嬉しかったり、寂しくなったり。その全てが、大切な思い出だ。
樹君はもうこの町には来ないと気付かされ、涙にくれた日々。
もう会えないかもしれないというのに、彼への想いをどうしても捨てきれなかった自分。
様々な記憶が一気に込み上げてきた。
私も樹君と一緒だ。樹君のことを思いながら生きてきた。
あの日々があったからこそ、奇跡のような今のこの瞬間が、たまらなく愛おしい。