イジワル副社長と秘密のロマンス
その一言に、視界がくらりと揺れた。
疲労感が憤りにすり替わっていく。爆発してしまいそうなのを、なんとか踏みとどまる。
「いやでも、さっき、孝介先輩は仕事の電話があって、席を外してるって言ったじゃないですか!」
「あぁ、それは嘘です」
悪びれる様子もなく、逆に当然だといわんばかりの顔で、彼は言い切った。
「スムーズに三枝さんとふたりっきりになるには、途中で彼らに消えてもらうのが一番ですから」
そして袴田さんは笑みを浮かべた。
孝介先輩の件で私に嘘をついたときも、袴田さんは笑っていた。
笑いながら嘘をついたのかと嫌悪感でいっぱいになっていく。
「騒がしくて居心地も悪くなってしまったのでレストランを出ましょうか。車を走らせながら、話をするとして……あぁ、そうだ。デザートを食べ損ねたので、一度、うちの店に寄りますか。ここに並んでいる洋菓子なんかよりももっと品のあるうちの和菓子を好きなだけ食べてください」
「ちょっと待って下さい!」
袴田さんの考えるこれからの予定を並べられ、私は慌てて口を挟んだ。
「私、行きません。帰ります」
「何言ってるんですか。高い食事までご馳走したのですから、あなたは当然僕に付き合うべきだ」