イジワル副社長と秘密のロマンス
身体を強張らせ目を泳がせていると、隣の彼がクククと笑った。
「見た目は年とったけど、中身は十年前のまんまだね」
「年取ったとか言わないで! っていうか、そこはお互い様だからね!」
「何言ってんの? 俺はちゃんと見た目も中身も大人になってるけど?」
「ちょっ、私だって大人になってます! 立派に大人です! 大人なんだからね!」
「どこが?」
彼のペースに巻き込まれて、ついついムキになってしまう。
少し冷静になるべく、彼の手から逃げようとしたけれど……だめだった。彼の腕が首にきつく絡みついてくる。
「どこに行くつもり? ふらふらしないでちゃんと真っ直ぐ歩きなよ」
「くっ、苦しいってば。しっかり歩きます。離してください」
「離したら転ぶでしょ?」
「この状態の方が転ぶってば!」
抵抗を続け、もつれあっているうちに、いつの間にか私は、彼の腕の中に閉じ込められた。
さっきまでとは違う優しい力で、樹君が後ろから私を抱きしめている。
「大丈夫。俺がしっかり支えるから」
真剣な声だった。
転びそうだから支えるというだけでなく、まるでそこに別な意味も含まれているような気持ちにさせられてしまう。