イジワル副社長と秘密のロマンス
「お前に恋人? 初耳だな」
「そりゃそうだよね。わざわざ報告なんてしないし」
「普通だったら兄としておめでとうと言ってやりたいとこだけど……厳しいこと言わせてもらうよ」
樹君のお兄さんがすっと息を吸い込んだ。
「樹、中途半端な気持ちでこの仕事を続けていくつもりなら、辞めてくれ」
突然の宣告に、狼狽えてしまう。ただ目を見張って、私は樹君のお兄さんを見つめた。
「AquaNextに次期副社長っていう身分をちらつかせれば、女はいくらでも寄ってくる。お前も大人だ。自己責任で遊べばいい。けどそれは会社の外でだ。会社の中に持ち込むな。この先、お祖母さんの思いの詰まったこの会社を守っていかなくちゃいけないんだ。俺は仕事そっちのけで女と遊んでるような片腕は要らない」
もしかして自分が秘書として傍にいることが、彼にとってマイナスになってしまうということだろうか。そう考えると心が冷えていく。
樹君が腕を解き、そっと私の前に出た。お兄さんと睨み合っている。あからさまな臨戦態勢に、ハラハラしてしまう。
「確かに今、俺は千花をからかって遊んでたけど、仕事をそっちのけにしてるつもりなんてこれっぽっちもない」